肩関節がゆるい人ってどんな人?動揺肩の原因や検査の方法を知ろう!

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肩関節ゆるい-アイキャッチ「肩関節がゆるいと言われた」

「スポーツをしていると肩が抜けそうな感覚がある・・」

「肩を動かすとコクンコクン音が鳴って外れそうな感じがする・・」

という、感じ方はいろいろですが肩関節に不安定感がある方は何か気持ち悪くて嫌ですね。

この気になる不安定感ですが、その原因はケガをそれまでにしたことがあるかどうかで2つにわけて考えられます。

  • 外傷性(脱臼など怪我をしたことがある)
    →脱臼をしたときに、肩関節まわりの軟骨・靭帯などが傷んでしまっている
  • 非外傷性(おおきな怪我(脱臼)をしたことがない)
    →肩関節まわりの構造にはおおきな問題がない

ケガをした経験のある方は、なんとなくわかっているので不安もまだましかと思いますが、そんなの何も経験していないという怪我などをした覚えはないという「非外傷性」の方は特に不安が強いと思います。

そこで今回がケガのきっかけがないのに肩関節がゆるいという状態について紹介していきたいと思います。

 

肩がゆるい=動揺性肩関節

肩関節が『ゆるい』状態になってしまう明らかな原因(怪我・脱臼など)がない場合を

  • 『動揺性(どうようせい)肩関節』
  • 『ルースショルダー(loose shoulder)』
  • 『非外傷性肩関節不安定症』

などと医学的には言います。

このような肩の症状の方は、研究でわかっているところで

  • 肩の痛みの中の2~4%
  • 10~20歳代に多い(特に10歳代)
  •  女性に多い

という特徴があります。実際の経験でも10代の若い女性ばかりでした。

この肩のゆるさが出てしまう原因には、

  1. 肩関節の構造的問題
    肩関節のつくり自体にゆるくなる原因がある
  2. 肩関節の機能的問題
    つくりには問題はないのになぜかゆるくなってしまっている
  3. 全身の関節弛緩(しかん)性
    肩関節だけじゃなくて全身の関節がゆるい状態

があると言われています。

これらを順番にみていきましょう!

 

1.肩の構造的問題

肩関節はゴルフボールとピンの関係に似ています。肩関節ゆるい肩甲骨イラスト肩関節ゆるいゴルフボール

  • ゴルフボール → 上腕骨頭(腕の骨)
  • ピン → 肩甲骨関節窩(かんせつか)

ボール全体を被っているのではなく、部分的に被っているところも肩関節と似ています。肩関節ゆるい肩甲骨1ゴルフボールとピンでは、完全にボールを覆っているわけではありません。

肩関節は、ここまで被りが少ないわけではありませんが、それでも『だいたい1/3』ほど被ってます。

この関節窩(かんせつか)が成長するときにうまく作られなく、小さくなってしまった状態を『関節窩形成不全』言います。
小さいのでゴルフボールとピンの状態に近づいてしまってグラグラ不安定になってしまうんです。

他の『肩峰』『烏口突起』という直接肩関節に関係ないところが形成不全でも影響することがあります。

これは病院に行ってレントゲンを撮ってもらわないとわかりませんし、実際に多いのは次に紹介する

  • 機能的問題
  • 全身弛緩性

のある方です。

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2.肩の機能的問題

『動揺肩』は、肩甲骨周囲の筋力低下によって起こるとも言われています。

『筋力低下』や『機能不全(筋力はあるがうまく機能できない)』によって、肩甲骨の動きがちゃんとできなくなってくることで、『肩甲胸郭リズム』の乱れが起きてきます。

肩甲骨と胸郭の間にあるリズムが乱れると

腕を挙げてみると、肩関節を中心に腕が挙がっているように感じられます。
そこを、よくよく観察してみると肩甲骨も一緒に動いていることが感じられませんか?

この腕を挙げる動きをするときに、 『腕(上腕骨)』と『肩甲骨』が一定の割合で協力し合って動いていることを『肩甲上腕リズム』と呼びます。

『動揺性(どうようせい)肩関節』の方は、
肩甲骨の動きが悪く上腕骨の動きが過剰になる傾向があると言われています。

『肩甲骨』が胸郭の上を滑るように動きますが、ここの連動がうまくいかなくなって来ているため、肩甲胸郭リズム』の乱れが『肩甲上腕リズム』の乱れを生み出し、肩関節に負担がかかってくるのです。

 

3.全身の関節のゆるさ(弛緩性)

全身の関節がもともとゆるいという『全身性関節弛緩症』の方もいらっしゃいます。

全身の関節がゆるいことがあれば、反対の肩や他の関節にもその関節のゆるさによる障害が起きる可能性が高まりますので、ここはしっかりチェックしておいた方がいいでしょう!

代表的なものには、『Carter徴候』などがあります。自分で簡単にチェックできますのでこちらをごらんください。

関節がゆるいとは?怪我や運動能力に関わるゆるさの評価方法を知ろう

 

肩関節のゆるさを調べる検査とは

肩関節のゆるさを人の手によって調べる検査はたくさん種類があります。

肩関節ゆるい-検査
いろいろありますが、こちらでは重要なものを選んで紹介させていただきます。

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サルカス徴候(Sulcus sign)

肩関節の『下方不安定性(loosening)』をみるテストです。

腕を自然にダランと下げた状態から腕を下に引っ張った時、肩に窪みができる状態で陽性。

肩関節ゆるい-サルカス1
肩関節ゆるい-サルカスサイン2

肩のポジションを内旋位(手の甲を前に向けた状態)でするのと

肩関節ゆるい-サルカス3
手のひらを前に向けた状態で引くのでは、

肩関節ゆるい-サルカス4
外に向けた(外旋)ほうが肩の安定性が高まります。安定性の高い位置でも下に引っ張って窪みが出れば確実に『動揺性(どうようせい)肩関節』となります。

この『ゆるさ』がある人は、

「重いカバンを提げると、肩がぬけそうになる・・」

「重いものを持った後、肩が痛くなる・・」

という訴えがあります。

ロードアンドシフト(load and shift)

肩関節の『前後不安定性』をみるテスト。

上腕骨頭を親指で抑え、他の指は肩峰に当てます。

肩関節ゆるい-ロードアンドシフト1
前方から後方に骨頭を押さえます。前から骨を押してから押さえていた指をゆるめると、バネが跳ね返ってくるように前に骨が戻ってくる(spring sensation)が起きれば陽性とします。

不安定性の程度は、『関節窩』から『上腕骨頭』がどれくらい移動するかで行います。肩関節ゆるい-ロードアンドシフト図

  • Grade0→移動しない
  • Grade1→少し移動する(約0~1cm)ないし、移動するが関節窩縁に乗り上げない
  • Grade2→関節窩縁に乗り上げるが、乗り越えない
  • Grade3→関節窩縁を乗り越える(2~3cm)

で評価します。

過外転テスト

座った状態で、

肩関節ゆるい-過外転1
検査をする人が肩(肩甲骨)を上から押さえつけます。

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押さえつけるのは、腕を挙げるときの肩甲骨の動きをなくす目的です。
その状態で、肩を横から挙げていきます。

肩関節ゆるい-過外転2
正常では、水平まで(90°)で止まります。

それ以上高く挙げられる場合は、
『関節がゆるい(特に、下関節上腕靭帯:inferior glenohumeral ligament (IGHL))』
とされます。

肩関節ゆるい-過外転3

前方不安定感テスト(anterior apprehension test)

患者の肘を90°曲げた状態で、腕を横から90°持ち上げます。

肩関節ゆるい-前方不安定感1
腕の付け根(上腕骨頭)を後ろから前に押し出します。

肩関節ゆるい-前方不安定感3
その時、

「脱臼しそう!」

「脱けそうで気持ち悪い!」

など訴えたら『前方不安定性がある(陽性)』と評価します。

このとき、

「肩の前が痛い!」

「肩がつりそう!」

など痛みを訴えた場合は、
肩に何かしらの問題がありますが、『前方不安定性はない』と評価します。

  • 座って行う場合を、別名『crank test』とも言います。
  • 寝て行う場合は、『fulcrum test』と呼ばれます。

フルクラムテスト(fulcrum test)

前に紹介した『前方不安定感テスト(anterior apprehension test)』を寝た状態で行います。

仰向けで寝た状態で、

肩関節ゆるい-フルクラム1
肘を90°曲げ、腕を横から90°持ち上げます。

肩関節ゆるい-フルクラム2
その時、患者が脱臼感を訴えたら『前方不安定性がある(陽性)』と評価します。

肩関節ゆるい-フルクラム3
このとき、痛み・違和感を訴えた場合は、『前方不安定性はない』と評価します。

リロケーションテスト(relocation test)

『フルクラムテスト(fulcrum test)』で脱臼感(不安定感)が出た状態で(このテストが陽性の場合)肩を前から押さえつけます。

肩関節ゆるい-フルクラム4
すると、脱臼感(不安定感)がなくなる場合を陽性とします。更にその状態で外旋(手が床に近づく)がよくいくようになったらこれも陽性です。

ジャークテスト(jerk test)

患者が座った状態で、腕を90°内旋位で挙げます。

肩関節ゆるい-ジャーク2
肩関節ゆるい-ジャーク1
曲げた肘から腕を肩甲骨に向かって押し込んだ状態で、

肩関節ゆるい-ジャーク3
内側に動かしていきます(肩関節 水平内転)

肩関節ゆるい-ジャーク4
その時、後方に肩が亜脱臼したら『後方不安定性がある(陽性)』と評価します。

このとき、痛み・違和感を訴えた場合は、『後方不安定性はない』と評価します。

スリッピング現象(slipping)

肩関節の挙上時不安定性をみるテストです。 肩を挙げたときに、上腕骨頭が側方・後方へとずれるのを確認します。
手で触って見る場合もありますが病院では腕を挙げた状態でレントゲン撮影をして画像で確かめます。

 

おわりに

けがなど明らかなきっかけがないのに、『肩関節がゆるい』という感覚はこの病態を知らない人でも

「ぬけそうな気がする」

「ズレている感じがする」

などの感じがわかるようです。

病院や整骨院などで「肩がゆるい」と言われた方も、それだけで重大な問題を抱えるということはあまりありませんが、ご自身の状態を正しく知っておくことは大切です。

そのような方が正しい現状認識をしていただけるお役に立てたならうれしく思います。

他の『肩の疾患』についても知っておきたいと思われた方はこちらをご覧ください!

「肩・腕が痛い!」とき、知って安心の『肩の疾患』をまとめて紹介!

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One Response to “肩関節がゆるい人ってどんな人?動揺肩の原因や検査の方法を知ろう!”

  1. 日野妙子 より:

    右利きなので、様々なことを右手を使って行うのですが、お料理をしているとき(特に野菜やお肉を切っているとき)肩がはずれそうになります。
    ふだんも、なんだか右肩(肩甲骨?)あまりに脱力感があります。
    左は違和感ないのですが、とても心配です。

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