足首の後ろの奥が痛くなるスポーツ障害!『有痛性三角骨障害』とは
「足首の後ろがなにかはさまったような痛みが出る」
「アキレス腱が痛いんじゃなくて、より足首の奥が痛い気がする」
という痛みでスポーツができないという方が結構いらっしゃいます。
足首の後ろのところで何かが挟みこんだ状態が起こっていて、それが『痛み』を生んでいる可能性があります!
これらでまず知っておきたいのは、
- 後方インピンジメント症候群
(posterior impingement syndrome) - 有痛性三角骨障害
(ゆうつうせいさんさくこつしょうがい)
という病名です。
これらは、
- クラシックバレエ
- サッカー
などのスポーツで足に負担をかけた場合に『痛み』の症状が起こりやすいものです。
『痛み』は
- スポーツを続けることでズルズルと痛みが続きやすく
(慢性化) - ひどくなればスポーツができない、日常生活でも痛みで困る
(ADL障害) - 状態によっては手術になる
など、けっこうやっかいな場合があります。
後方インピンジメント症候群 ・有痛性三角骨障害 などの診断を病院でされた方や、足(足首)の後ろ側が痛いという方、まずは これらについて知っていただければと思います。
2つの病態を一緒に扱うのは・・
今回、テーマとして取り上げる
- 後方インピンジメント症候群
(posterior impingement syndrome) - 有痛性三角骨障害
は、病名が違うことからもおわかりいただけるように、厳密に言えば病態は違います。
しかし、『病態』は違うとはいえ
- 診断がつくまでの症状の出方や原因
- 診断後の治療や対処方法
がかなり似通っています。
そこで、別々に扱うよりも同じように扱うほうが理解が深まるのではないかかと思ったため、そうさせていただきます。
この2つの大きな違いである『病態』『診断』をまず別々に紹介させていただき、後はひっくるめで一緒に紹介させていただく流れとなりますので必要に応じて読み飛ばすなどの対応をお願いします。
すごくざっくり言えば、
『足首の後ろになにかが挟まってしまう問題で、その挟まっているもの(骨・軟部組織)の差』
がこの2つの病名の大きな違いなのです。
有痛性三角骨障害とは
最初は、2つあるうちのひとつ目の
『有痛性三角骨(ゆうつうせいさんかくこつ)
:os trigonum syndrome』
から紹介していきます。
病名から状態を考えてみると、
- 有痛性
『痛み』が出ているという意味。
これは普通は『痛み』が出ない場所だけど、『痛み』が出ている状態を言います。 - 三角骨
足首にある『距骨(きょこつ):talus』の後ろ側にできる、余分な骨(過剰骨)のことを言います。 - 障害
ケガ(外傷)ではない状態で身体に問題が出ている です。
ここから、簡単に解釈すると
『本来はあまりない余分にできた三角骨という骨のところが、何かしらの原因で痛みが出てしまっている状態』
を言います。
三角骨について
まずは、『三角骨(さんかくこつ)』について紹介していきます。
『三角骨』は、
一般的にはない人の方が多いけれども、一定の割合の人の身体にはある
『余分な骨(過剰骨)』
のひとつです。
この『過剰骨(supernumerary bone)』は、足の他の部分にも多くあって
- 三角骨(さんかくこつ:os trigonum)
足首の後ろにあるもの - 外脛骨(がいけいこつ:os tibiale externum)
足の内側にできるもので1番よくみられる - os subtibiale
足の内くるぶしの下端にみられる - os subfibulare
足の外くるぶしの下端にみられる(厳密には過剰骨とはいえない) - os peroneum
足の外側(立方骨)あたりにみられる
などがあります。
この『三角骨』は、
本来、幼少期にはもともと2つに分かれている状態から成長期にお互いがくっついていく(癒合)過程を進みますが、
うまくくっつかないまま大人になってしまった状態を言います。
一般的に痛みがない状態でも、全体の10%前後の人にみられると言われています。
このように自然にできるもの以外にもあります。
例えば、クラシックバレエの立つときの足(ポアント:Pointe)のような場合です。
足首が強制的に過剰にに下向く(底屈)ストレスが加わっているところに更に瞬発的な外力が加わることで、でっぱり部分に骨折(Spephard骨折)が起きることがあります。
それがきちんとひっつかなくなってそのまま(偽関節)離れているという場合もあります。
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足の後ろに出る痛みの原因
『三角骨』があっても必ず『痛み』などの症状が出るとは限りません。
むしろ、『三角骨』があっても症状が出ないこともよくあります。
そのため、違う足の痛みでレントゲンを撮ったときに
「あれ?三角骨あるね。ここは痛くない?」
なんてことがきっかけで、自分の足に『三角骨』があることを知る人がいらっしゃいます。
この『有痛性三角骨障害』を含めた足関節の後ろに出る『痛み』にもいくつかの状態があります。
- 『距骨の後突起』のそばを通る、『長母趾屈筋』にストレスがかかってこの筋肉の腱が『炎症』を起こす(腱鞘炎)
- 『距骨の後突起』がもともと大きくて(Stieda結節)挟み込み(インピンジメント)をおこすことによる(後方インピンジメント症候群)
- 『三角骨』が『距骨』と軟骨成分でくっついているところを、運動による衝撃で引きちぎられてしまうことに起こる『炎症』(骨軟骨炎)や挟み込みによる痛み
- 『距骨の後突起』の骨折(Spephard骨折) や後距腓靭帯損傷による剥離骨折など(骨折)
- 足関節の後ろの方にある軟部組織(関節包や靭帯(IML:intermalleolar ligament))によるインピンジメント(soft tissue impingement)
細かく分けるときりがないように見えてきますよね。
簡単にまとめると、 運動による負担が足首にかかって、
- 筋肉
(長母趾屈筋) - 靭帯
(横脛腓靭帯やIML:intermalleolar ligament)) - 骨
(距骨、三角骨) - その他の軟部組織
などに『炎症』などの障害が起こることで『痛み』が起きます。
後方インピンジメント症候群とは
次に、ふたつ目の
『後方インピンジメント症候群(posterior impingement syndrome)』
について、紹介していきます。
これは、病名からして
- 後方
足首の後ろ側に - インピンジメント
何と何がという原因は特定せずに挟み込まれる状態が起こっている - 症候群
いろいろな病態の集まり を言います。
足首の後ろ側が
- 詰まったような
- キュッと挟み込まれたような
痛みが出ているものは
『有痛性三角骨障害』を含めて全体を
『後方インピンジメント症候群(posterior impingement syndrome)』
という大きなくくりでみることができます。
挟み込んでいるもので区別する言い方としては、
『足関節インピンジメント症候群(soft tissue impingement)』
という言い方をしたりもします。
ここが言い方がいくつもあってややこしいのですね。
何を基準に区別しているで名称が違いますが、だいたいは似たり寄ったりと思っていただいて差支えありません。
その挟み込み(インピンジメント)の原因が
『三角骨』とはっきりした場合は 『有痛性三角骨障害』 と厳密に診断されるというように理解していただければわかりやすいかと思います。
長母趾屈筋腱炎について
この『有痛性三角骨障害』の症状として起こりやすい
『長母趾屈筋腱炎(ちょうぼしくっきんけんえん)』
について少しくわしく紹介しておきます。
『長母趾屈筋(Flexor hallucis longus muscle)』は、
足の親指を曲げる動きを担当している筋肉です。
この筋肉が、『三角骨』や『距骨の後突起』のすぐ横を通っていきます。(イラスト)
長母趾屈筋腱炎の原因
長母趾屈筋腱炎になる原因は、
『スポーツや日常生活を含めて、足を良く使うことによる酷使(オーバーユース)による過剰な負担』
です。
特に、クラシックバレエなどのダンスをされる人に多く発症することから
『ダンサー腱鞘炎(dancer’s tedinitis)』
とも別名で呼ばれることもあります。
足首の後ろ側に負担がかかる状況のときには、この筋肉にも負担がかかってしまうことになります。
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足関節後方インピンジメント症候群の症状
『有痛性三角骨障害』を含む『後方インピンジメント症候群』が起こりやすいのは、
- スポーツで足先を下に向ける動作をし過ぎる(オーバーユース)
- 捻挫や足先を下に向けた状態で急激な負担がかかるなどの怪我
がきっかけで起こります。
『骨折』が起きていれば、
- 傷めたきっかけがはっきりしていること
- 痛みは非常に強い
ことから、問題が起きていることはすぐにおわかりいただけると思います。
そこで、今回は判断が難しい
『骨折が起きていない状態』
を中心にその症状を紹介したいと思います。
- 足関節の後ろの痛み
足関節の後ろでアキレス腱のように表のほうではなく、奥の方が痛いと感じます。 - 運動痛
・歩いたり
・走ったり
・つま先立ち
という日常生活でもある動作でも痛みが出てきます。 - 圧痛
足関節の後ろ側を指で押さえると痛みが出ます。 - 赤み(発赤)・腫れ(腫脹)
『腫れ』や『発赤』はない方のほうが多いためあまりあてになりません。 - 底屈痛
足首を下向けにしたとき痛みが出るかみます。
これは自分の力でするのではなくて手で足を持って手の力で動かして痛みが出るかみてみます(他動的底屈)
足関節後方インピンジメント症候群の画像診断
『足の後側の痛み』に対する画像診断は、
- レントゲン(X線)
をまず行います。
- レントゲンで正常と違うのが分かる
→三角骨があったり、骨折があったりする - レントゲンで何も変化が得られない
→軟部組織のインピンジメント症候群
と鑑別することができます。
この距骨の状態を分類すると、下の図のようにわけられます
骨折や三角骨の形状がどのようになっているのか細かく診るときには、
- 『CT:computed tomography』
撮影を行います。
これは、手術の適否を判断するときなど、詳細を知りたいときに撮影されることが多いです。
『炎症』を確実に診るためには
- 『MRI:magnetic resonance imaging』
を行います。
これで、『長母趾屈筋腱炎』など軟部組織の炎症などの問題も画像で確認することができます。
ここまで、『有痛性三角骨』を含む『足関節後方インピンジメント症候群』の病態から診断までをご覧いただきました。
後半は、治療方法やテーピングについて解説していきます。
お身体に関するお悩み解消にお役に立てる情報が提供できていますと幸いです。
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