『肩インピンジメント症候群』リハビリで診断・評価する徒手検査とは
肩甲骨の機能は正常に働いているか?
肩関節の動きは、
- 肩甲上腕関節(いわゆる『肩』って場所の関節)
- 肩甲胸郭関節(背中の『胸郭』の上を『肩甲骨』が動く)
この2つの関節の動きが大きく関わっています。
腕を上に挙げるとき、角度は180°動きます。
その運動の内訳をみてみると、
- 肩甲上腕関節→120°
- 肩甲胸郭関節→60°
動きを担っていて、だいたい『2:1』の一定のリズムで動いているのを 『肩甲上腕リズム』 といいます。
この2つの関節のどちらかの動きが悪くなって『肩甲上腕リズム』が崩れてしまっている場合があるので、それららを適切に把握するためのテストを紹介します。
このテストは、自分一人でできませんので、するときは誰か検査者の人が必要になります。
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CAT(Combined abduction test)
腕を挙げる(外転)動作での『肩』と『肩甲骨』の動きを確認します。
ここでは、普段連動して動く『肩甲骨』の動きを抑え、『肩(肩甲上腕関節)』単独の動きを診ます。
まずは、健康な側の『肩』から検査を始めるようにしておきます。
健康な側の『肩』でどのくらい動くのかその人の個性を含めた動きの目安をつかんでおきます。
そうすると、傷めている『肩』を必要な力で適切に動かして負担を少なく検査が行えます。
- あおむけに寝ます
- 検査者は、健康な側のわきのところから腕を入れて『肩甲骨』をおさえます
- 検査者は、腕を持ち外側に動こうとする『肩甲骨』が動かないようにしっかり押さえ続け、腕を挙げていきます
- 腕が上がらなくなるところまでいったら角度を測ります
- 傷めている『肩』を同じ手順で測っていきます。
HFT(Horizontal flexion test)
腕を内に向ける(水平屈曲)動作での『肩』と『肩甲骨』の動きを確認します。
投球でいう投げ切る時付近の動きに近い動きですね。
こちらも、健康な側の『肩』から検査を始めるようにしておきます。
- あおむけに寝ます
- 検査者は、健康な側のわきのところから腕を入れて『肩甲骨』をおさえます
親指と人差し指の間に『肩甲骨』を挟み込むようにすると抑えやすくなります。 - 検査者は、腕を持ち反対の肩側に腕を動かしていきます
- 腕が上がらなくなるところまでいったら角度を測ります
- 傷めている『肩』を同じ手順で測っていきます。
柔軟性などの身体機能を全体的に評価
肩のインピンジメント症候群は、肩まわりだけが原因でおきることはなく、投球動作などの運動に関わる全身の動きの中で不調が起きた場合、それをかばっていくことでフォームが乱れ、肩に負担をかけることになります。
そこで、『肩関節』の機能を評価できましたら、他の関節(特に股関節)の動きを評価し、問題点を探します。
その中でも大切な検査をいくつか紹介しましょう!
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指床間距離(FFD:finger floor distance)
ふくらぎ・ふとももの裏・おしり・腰・背中・・と、身体の背中側全体の柔軟性をみようというものです。
昔から『立位体前屈』という項目で身体測定でもされている項目ですね。
- ベッドか台の上に立ちます
- 膝が曲がらないように、反動を使わないように注意しながら指先が地面の方に近づくように前屈していきます
- 地面と指先の距離を測ります
下肢伸展挙上角度(SLR:Straight leg raising )
これは、ふくらはぎ・ふとももの裏・おしり・腰あたりの柔軟性を評価します。
- あおむけで寝ます
- 検査者が足を持ち、膝が曲がらないように注意しながら足を持ち挙げていきます。
- 最大に挙がるところで止めてその角度を測ります。
- 反対側も測ります。
股関節内旋角度(HIR:hip internal rotarion)
投球動作で踏み込んだ脚の股関節は『内旋』していきます。
それがうまくできるかを評価します。
そこで、仰向けになった足を90°持ち上げた状態で足を外に向かってねじります
余談ですが、野球のピッチャーって
- おしりが大きくプリッとしてて
- 太ももががっしりしてて
- ちょっと内股
ってイメージありませんか?
この体型で投げると股関節の『内旋』がうまくいくんですよね。
そういった意味でもこの評価は大切になってきます。
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踵殿間距離(HBD:Heel buttock distance)
おしりといえば『ヒップ(hip)』とイメージしてましたので、この英語を知った時には
「ん?buttock?バトック?何それ?」
と教養の低さがばれてしまうような疑問を持ちましたが、『buttock』とは『臀部』の意味なんですね。
この計測は、股関節の硬さを測るひとつの指標になります。
- うつぶせで寝ます
- 検査者は、足を持って踵がおしりに近づくように膝を曲げていきます
- 踵とおしりの距離を測ります
ここで、股関節(特に大腿直筋)の硬さが明らかだと、おしりを挙げてしまう 『尻上がり徴候(Ely sign)』 が認められます。
おわりに
『肩関節インピンジメント症候群』を評価していくのは原因が多岐にわたるため、非常に難しくなります。
そのため、それら関係のある身体の状態をひとつひとつ丁寧に把握していくことが必要になり、評価をもとにリハビリ(治療)を行うことが非常に大切になってきます。
そうしないと、何がその患者さんをどう変化させているのかを客観的に把握することがまったくできなくなります。
ただでさえ、日常生活に支障がない人の多い『肩関節インピンジメント症候群』の治療は、痛みが常に出るわけでもないため、
「スポーツをとにかく休んでみたらいっか・・」
「別に普段痛くて仕事ができないわけでもないし・・」
みたいに感じることから、治療意欲の低い人が多いのが現状だと感じています。
そういった方には、しっかりと現状を把握していただき、治療の必要性を感じ、治療によりそれが変化していくことを実感していっていただかないと治療への意欲が保てません。
これらを活かしてよりよい治療に役立てていただればと考えます。
お身体に関するお悩み解消にお役に立てる情報が提供できていますと幸いです。
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と思われた方は、こちらで直接診せていただくこともできます。
お問合せお待ちしております
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