サッカーなどのスポーツ選手に多い足の付け根が痛む『鼡径部痛症候群』とは
「サッカーをしてたら股関節まわりが痛いけど、痛みの場所がなんかはっきりしない」
「足の付け根が痛くて診てもらったら鼡径部痛症候群(そけいぶつうしょうこうぐん)と言われた」
というように、内ももや下腹など股関節に近いものも含めて痛みがあって特にスポーツをされている方(サッカーなど足や股関節をよく使うスポーツ)は
『鼡径部痛症候群(グロインペイン:groin pain syndorome)』
の可能性を疑っておくとよいかもしれません。
実際にこの病態の方は、病院や治療院でもなかなかきちんと診断されることはありませんし、決定的な治療も大して期待できません。
しかし、きちんとアプローチをしていけば自分で治していくことができます。
そこで、今回は『鼡径部痛症候群(グロインペイン)』について、特徴から治療・セルフケアまで紹介していきます。
鼡径部痛症候群(グロインペイン)を疑った方がよいケースって!?
足の付け根(股の付け根)に痛みがあると言っても
- 骨や関節に問題がある
恥骨結合炎、恥骨疲労骨折、変形性股関節症、FAI - 内臓に問題がある
- 筋肉に問題がある
など、いろいろな原因で痛みが出ます。
その中で鼡径部痛症候群(グロインペイン)の可能性が高いのは
- スポーツをしているかそれに近い運動量がある(特にサッカー)
- 日常生活に支障が出ることは少なく、スポーツをするときに限って痛みが起こってくる
- 痛みの場所がぼんやりとしている、はっきりしない
などが当てはまる場合です。
「足(股)の付け根の両側が痛い」
などというような他の疾患ではあまり起こりにくいような訴えもある場合もあります。
鼡径部痛症候群(groin pain syndorome)とは
鼡径部痛症候群とは、
- 明らかな器質的な問題があるわけでない
骨や関節・内臓などが明らかに傷んで問題を起こしているわけではない(≒レントゲンやMRI、エコーや血液検査など病院できちんと検査してもはっきりとした原因が特定できていない) - 運動時に股関節まわりの連動がうまくいかず負担がかかっていることが原因と考えられる
- スポーツや運動時に股関節まわりに痛みが出る
ものを言います。
- グロイン(groin)→鼡径部・股の付け根などの意味
- ペイン(pain)→痛み
- シンドローム(syndorome)→症候群、関係する症状の集まり
という病名からも、はっきりとした股関節まわりの疾患の病名がつけられない、特定できないけど確かに痛みは鼡径部周辺に出ているというものは、
- 股関節部痛
- 恥骨結合炎
などの病名か、この鼡径部痛症候群とつけられることになります。
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医療現場的には、はっきりしない病態のものでも病名をつけないわけにはいきませんので『その他』的な扱いになるこれらの病態に振り分けて病名がつけられることがよくあります。
その痛みはいろいろありますが、多くは
- 鼡径部
- 内もも
- 下腹
あたりに訴えることが多いです。
鼡径部痛症候群の検査・診断
足の付け根の痛みで病院を受診した場合には、まずレントゲン(X線)検査を行います。
そこで、疲労骨折など正常でない問題が起こっていそうなことが診られたらMRIなどで精査を行うことになるでしょう。
これらで問題があることが分かった場合にはそれぞれの病態にあわせて
- 股関節インピンジメント症候群
- 変形性股関節症
- 疲労骨折
- 腱付着部炎
など病名がつくことになります。
画像上で病態がはっきりわからない場合や診断の精度を高めるために徒手検査(理学検査)をあわせて行います。
徒手検査を自分でする方法はこちらで紹介しています。
「足の付け根が痛いとき股関節にどんな問題があるのかまず自分で簡単に検査してみよう!」
これで、器質的(構造的に)な問題がはっきり見つからないですが、確かに動かしたりすると痛みがある機能的な問題だと確定した場合に
『鼡径部痛症候群(グロインペイン)』
と診断がつきます。
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鼡径部痛症候群の治療とセルフケア
鼡径部痛症候群になった2大要因は
- 股関節の動きが多い運動・スポーツを行っていることによる負担
- 股関節に負担が集中する身体の使い方
になりますので、これらの要因にアプローチする形で治療を行っていきます。
安静・スポーツ休止、制限
まずは痛めている場所を酷使しないようにします。
病態がはっきりわかっていないとはいえ、その患部に負担がかかり損傷やそれに伴う炎症が起こったりしていることが考えられます。
それを悪化させずに自然治癒力の力もかりて治していくことは非常に重要です。
そのため、症状が強い場合には一時的にスポーツを控えたりすることが大切です。
他の部分に痛みや問題があればそちらをしっかり治療
鼡径部痛症候群では、股関節の動きをするときに他の腰(体幹)や膝などの関節と協同しています。
しかし、それらの股関節以外の部分がケガや傷めてしまっていて、協同がうまくいかずに股関節に負担がかかってしまったという方が意外に多いです。
その中でも股関節と腰の関係は密接なもののため、腰痛は軽いものであっても特に注意する必要があります。
思い当たる方は、股関節のケア以上に腰まわりをきちんと治療・セルフケアしていくことが両方にとってよい結果をもたらしてくれます。
股関節に負担のかからない使い方や、他の関節との連動を訓練する
スポーツでは必ず全身をうまく使っていくことがケガをしないためには必須になってきますが、スポーツ中に常に意識しておくことはいきなりはできません。
そこで、スポーツ以外の時に股関節まわりを
- 無駄な力みを使わず柔らかく使えるように
- 他の関節との連動を意識した動作の練習
をすることが大切になってきます。
これらの協調訓練により、股関節の痛みが改善されるのはもちろんですがその後のスポーツのパフォーマンス向上にも繋がってきます。
是非ともすぐに取り組んで早くこれらのスキルを身に着けていきましょう!
「治療やリハビリとして行う股関節を正しく使う方法を身に着ける機能訓練の体操とは 」
おわりに
鼡径部痛症候群(グロインペイン)は、スポーツをしている方にとっては比較的知られている病名です。
ただ、実際には病院できちんと診断されているという方は少なくて、
- 病院に行ってない、または行ったけど股関節部痛や恥骨結合炎などと診断されるだけで治療は特にされていない
- トレーナーや整骨院や治療院などで治療家からこの診断名を言われた
- 痛みの感じからまわりのチームメイトにグロインペインだと言われた
など、結構ざっくりとした感じでグロインペインだと捉えられている方が多いです。
そういう方は、スポーツのときだけ痛むし、痛みもぼんやりしていてなんかはっきりしないなど重症ではなさそうと感覚でわかっているからそのような対応になるのだと考えられます。
その理解のままでもちろん構いませんが、ほったらかしにするのはお勧めできません。
股関節の協調訓練や他の部分の痛みなどの治療をきちんとするなど、自分のでいる対処はきちんとして早く痛みを解消していっていただきたいと思います。
もし、それらをやってもなかなか改善されない場合には、もしかしたら他の病態が隠れているかもしれません。
それを区別するためにもきちんとまずは自分でやれることをやる必要がありますので、自分のできるところから取り組んでいっていただければと考えます。
お身体に関するお悩み解消にお役に立てる情報が提供できていますと幸いです。
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