走ると膝の外側が痛くて長引く!困ったランニング障害『腸脛靭帯炎』とは
スポーツで走り込んでいると膝を動かす筋肉に負担がかかる
『ランナー膝(ランニングによる膝周辺のスポーツ障害の総称)』
に悩まされる方がいらっしゃいます。
ランナー膝の中でも特に多いのが、膝の外側に痛みが出る
『腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)』
があります。
近年は
- 身体を動かすことが少ない仕事をする人が増えている
- 健康への意識が高まっている などの時代背景から
『ランニング(ジョギング)』をされる方が増えている傾向があっていったん走る習慣が身につくと、
- 運動をすると気分がすっきりする
- 運動をしないと身体がムズムズしてくる
とはまってしまって、自然に運動をするようになります 。
そこで、練習量が多かったり急激に増やしてしまうことなどで膝が痛くなることがありますが、そこまで習慣になっているとちょっとくらいでは練習を減らしませんので走れなくなるまで悪化させる人が多くなります。
痛くなった時に対処するためには『腸脛靭帯炎』がどういう疾患か起こる原因から症状などをきっちり知っていただくことは大切でしょう。
腸脛靭帯炎とはこすれつづけて起こる炎症
『腸脛靭帯炎(Iliotibial Band Fliction Syndrome)』とは、
- 『腸脛靭帯(ITB:Iliotibial Band)』
足の付け根の横側から太ももの外側を通って膝の外側に渡って着いている靭帯(正確には、上側は大腿筋膜張筋になる)
- 『炎』
炎症を起こしている
状態 を言ってランナー膝の代表とも言われる腸脛靭帯炎は、
- ランニング(ジョギング)
- 自転車
- エアロビクス
などのスポーツの方に多いことから 『膝の曲げ伸ばしの動きが多い』 ことが1番の原因となります。
ジャンプなど瞬発的な曲げ伸ばしでも起きますが、とにかく回数を多く曲げ伸ばしする方が腸脛靭帯炎は起こりやすく思っておかれるとよいでしょう!
この膝の曲げ伸ばしのたびに、
- 腸脛靭帯が
- 太ももの骨(大腿骨外側上顆)を
乗り越えますがお互いが『こすれて』しまうのを繰り返していくうちに『炎症』が起こります。
運動選手の1.6~6.4%に起こると言われています。
臨床スポーツ医学 2008vol25、p257より
腸脛靭帯炎の原因となりやすい人の特徴を知ろう
腸脛靭帯になる原因は、
- 身体の個性
- スポーツ活動のし過ぎ(オーバーユース:overuse)
- スポーツ環境
と大きく3つが言われています。
スポーツ活動のし過ぎ(使い過ぎ)はわかりますが、他の2つに関しては具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
詳しくみていきましょう!
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1、腸脛靭帯炎になりやすい身体の個性
腸脛靭帯炎になりやすい身体の個性には、
- 成長期の発育状況によるもの
- 身体のアライメント(姿勢)
があります。
成長期の発育状況によるもの
成長期には、すべての組織が成長していきますが
- 『骨』→しっかりと成長しやすい
- 『筋肉』『靭帯』など→『骨』に比べて成長が遅れがち
になりやすく、腸脛靭帯が一時的にピンピンに張った状態になって太ももの骨にこすれを起こしやすくなります。
身体のアライメント(姿勢)
腸脛靭帯炎になりやすい『アライメント』には、 『いわゆるO脚』 があります。
細かく言っていくと、
- 足先が内側に向いている(トゥイン:toe-in)
- すねの骨が内向きにねじれる(脛骨 内旋)
- 膝が外側に移動している(ニーアウト:knee-out)
- O脚(内反膝:bowleg、genu varum)
などがあります。
『いわゆる『O脚』のときの各部分がどういう状態になっているかを分けて表現している』
と理解していただければと思います。
ちなみに『X脚』は、基本的にはその真逆のアライメントになります。
2、腸脛靭帯炎の原因となるスポーツ環境
ランニングを例に挙げますが、よく言われるものに走るとき
- 硬い路面を走っていないか
アスファルトなど硬い路面だと、地面からも反発力が強く膝全体にかかる負担が大きくなります。 - 道路の端を走っていないか
道路の端は雨のときなどの水はけを良くするために真ん中に比べてやや低めにしています。
走るときには、外側の足は、非常に小さいながら『O脚』を強制されるような負担が着地のときにかかっていくのが問題になることもあります。 - トラック走
トラックなどを同じ方向にグルグルまわるような走り方をしている人 (学生が学校のトラックを使っている場合が多いです) の外側の腸脛靭帯には負担がかかります。 - シューズ
気に入ってるから、まだまだ使えるから、とソールが減っているのに長い期間履き続けている場合
を気をつけなければいけません。
その他に原因としていわれるものには
- 身体が硬い(柔軟性が低い)
- ウォーミングアップの不足
- 体重の増加
がありますがこれに関しては、腸脛靭帯炎に限ったことではありません。
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走ってて膝の外側が痛いのが腸脛靭帯炎の1番の症状
痛みの出方は、最初は走った後に 『膝の外側あたりに違和感』 が生じますが、休んでいれば次の日には今まで通りに走れるようなものです。
そのまま放置していると、少しずつ違和感が『痛み』へと変わっていき、運動後に出ていた『違和感・痛み』が運動中にも出てくるようになります。
更にひどくなってくると、
- 『痛み』で走れない (スポーツへの支障)
- しゃがめない、階段の上り下りが痛い、歩いても痛い ・足をひきずって歩く
など、日常生活にも支障が出るほどの『痛み』になっていきます。
医療機関にかかるのは 『スポーツが満足にできなくなってきた』中程度以上の症状になってからで、それまでは、運動をやめたくないからみなさんだましだまし続けてしまうんですね。
腸脛靭帯炎かどうかを自分で調べる徒手検査法とは
腸脛靭帯炎かどうかを動きなどから検査する方法を紹介します。
通常検査は、検査をする先生が患者さんを検査しますが、今回はそれを『一人二役』して自分でやっていただけるようなやり方にします。
グラスピング テスト(Grasping test)
「靭帯がこすれる状況を作りだして痛みが出るかをみてみよう」
という主旨でこすれる環境をわざと作ってみるテストになります。
- 膝を軽く曲げた状態で座ります。
- 痛みのあるところのやや上側を手でつかみます。
- そのまま膝を曲げ伸ばしします
- 痛みが出たら陽性とします
オーバー テスト(Ober test)
次は、『腸脛靭帯』を伸ばす動作が問題ないか診るテストです。
陽性だと、『腸脛靭帯』が 『過緊張や短縮』 などして腸脛靭帯炎の原因になる可能性あるよなっていう意味合いです。
少し余談ですが、このテストは本によって
- 読み方
- やり方
が違います。
オバー、オベールなどありますが、調べた結果 『オーバー』 が1番カタカナにしたときは適切かと考えます。
- 痛い側の足を上にして横に寝ます。
- 痛い側の足を後ろに引き、上に挙げます(股関節 伸展・外転)
- そこから足を下に下していき、膝が床に着くまで下りるかみます。
- 床に下りなかった場合は陽性とします。
※これで痛みが出た場合は腸脛靭帯炎 とみても良いでしょう!
画像診断
『腸脛靭帯炎』の場合に詳しく精査することは多いことではありません。
まずは、『レントゲン(X線)』撮影をしますがレントゲンではわかりませんが他の問題が潜んでいないことを確認する 『鑑別診断』としての意味合いでおこなわれます。
『腸脛靭帯』の『炎症』を診るとなった場合には、『MRI』検査が有用です。
おわりに
膝の外側が痛むランナー膝の代表となる『腸脛靭帯炎』についてその病態を紹介してきました。
オーバーユースによる炎症が起こっていますので、休ませれば治るのは間違いありませんが我慢していた人は慢性化しているためちょっとくらいでは治ってくれないのが少しやっかいなところです。
しかし、病態をきっちりわかっていただいた今ならきちんと休まないといけないことも実感していただけたのではないかと思いますので無理をしないで過ごしていただければと思います。
お身体に関するお悩み解消にお役に立てる情報が提供できていますと幸いです。
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