手首の骨折のギプス固定後に後遺症が残らないように自分でリハビリする方法とは
「転んで手をついたせいで手首の骨を折ってしまってギプスの治療をしました、ギプスを外して骨はもうくっついてるみたいだけど、これから何をしていいかわからない」
手首は、進化の過程でサルのように自分の体重を支える役目をしなくなったことから、細い手首で身体を支えるのには適していません。
手で身体を支えることは日常生活ではないと思われるかもしれませんが、何かにつまづいて転んだときなどにはとっさに手が出てしまうことがあります。
そのようなときには、体重に勢いが加わってその衝撃に耐えられない手首の骨が折れてしまうということはよくあります。
転倒で骨折しやすいところと言えば
- 手首(橈骨:とうこつ)
- 鎖骨
- 大腿骨
が有名で特に年齢を重ねていくと
- 転倒しやすくなる
- 骨粗しょう症で骨が弱くなっている
ことからもこれらの場所を骨折される方は非常に多いです。
大腿骨では折れ方によって手術をするケースが多いですが、逆に手首は比較的ギプス固定などの処置が多くなります。
手首の骨折の場合、(折れ方にもよりますが)ギプス固定を3週間前後おこなって骨がくっつくのを待ちます。
その後、ギプスを外すと骨はくっついていますが、骨をくっつけるためにじっとしていたことで骨と一緒にまわりの筋肉や皮膚などの軟らかい組織もカチカチに固まってしまう『拘縮(こうしゅく)』という状態が起こります。
これはギプス固定をすればどなたにでも起こってしまい、手首を今まで通りに動かすことができません。
そのためギプスを外した後は、骨がついた喜びもつかの間
「こんなカチカチの手首になってしまって元通りになるんだろうか・・」
「これってリハビリとかしないといけないんじゃ・・」
という疑問や不安で一杯になりますが、リハビリをきちんとしてくれる病院ばかりとは限らず医師から
「家事など日常生活で動かしといてください」
だけ言われて帰されてしまう方がたくさんいらっしゃいます。
日常生活で普通に使っていけばおおよそ元通りに近づいていく、という考えからそのような指示をされるのでしょうが、きちんとリハビリができるほうがその後の手首にとってはいいことに違いありません。
そこで、今回は手首のギプスが外れた後に自分でリハビリを進めていく方法を紹介していきます。
日常生活を普通に過ごすだけでは拘縮は完全にとれないことが多い
組織が固まる『拘縮(こうしゅく)』は
- ギプス固定の期間が長ければ長いほど
- 年齢が高ければ高いほど
強く出やすくなりがちで、そういう方には自然の改善を待つよりは手首のリハビリはとても重要になってきます。
病院で医師から
「普段の家事とかで動かしておけばいいですから」
というのは間違いではありませんが、きちんとリハビリしないと
- ちょっとした動きのときの痛みがいつまでも抜けなかったり
- 雨降りの日などに疼いたりしたり
いわゆる後遺症というやつが残りやすくなります。
実際に日常生活で普通に過ごしているつもりでも骨折を経験された後であれば無意識に
- 骨折した側の手を使う頻度は少なくなってかばいがちになる
- 手首を使うといっても限られた範囲のことしかしない
ことになってしまい、拘縮がとれきらないで残ってしまうのが一般的です。
動かすと痛いと言ってもちょっとはがんばるのがリハビリ
「手首を動かすと痛い」
と言う場合一般的にはどのような対処をするか、というところから整理しておきます。
ケガなどでなく手首が痛む、というのが一般的には起こりやすく腱鞘炎や使い傷みが原因になります。
これらの場合には、『酷使すること=悪化』のため
『無理に動かすことをやめて痛みの出ないように過ごす』
ことが原則であり治療になります。
しかし、骨折で固定処置などを経て起こる『拘縮』の場合は、それらの使い傷みとはまったく別物と分けて考える必要があります。
この拘縮の問題は、骨をくっつけるためとはいえわざとじっとし過ぎたせいで組織がカチカチに固まってしまっているという特殊な状態が原因なので、その対処法は使い傷みとは変わり、
『多少の痛みは我慢しながらたくさん大きく動かしてほぐしていく』
ことが大切になります。
ここで、いつまでもじっとしては改善が遅れるばかりですし、動かしたときの痛みを怖がってあまりにも長くじっといつづけると、神経にエラーが起こる
『複合性局所疼痛症候群(CRPS:Complex regional pain syndrome)』
というやっかいな状態に移行してしまうケースもあります。
ただし、スパルタでガンガンやればいい!と言っているわけではありません。
手首の状態にあわせて痛みは最小限になるように工夫しながらじっとして固まっている組織を解きほぐしていく必要があります。
手首をじっくり動かす練習はじっくりコツコツと
ギプス処置後の手首はとにかくありとあらゆる方向に固まってカッチカチになってしまっています。
そこで、リハビリとして動かしていきますが多少手順がありますのでそれをご紹介していきます。
まずギプスを外して2~3日の初期には激しいリハビリはしません。
とにかく、何も動かしていなかったところから日常生活で少しずつ動かしていくようにするだけ意識していきます。
(最初のガチガチの時は、日常生活で動かす努力をするだけで十分にリハビリ効果が得られますので無理はしないことが大切です。)
数日経過してからいよいよリハビリとして手首を動かしていきます。
そのときのリハビリのおススメは、『お風呂の湯船の中で動かす』ことです。
お風呂で温まっていることと水圧がかかっている状態で行えば、痛みが少なく効果的にほぐしていくことができるためです。
ただし、お風呂でじっくり行えば他の時間は何もしなくていいというわけではありません。
他の時間帯でももちろんしますが、1日の中でしっかりがんばるリハビリはお風呂を活用すると良いという意味です。
そして、動かすときにはやみくもに動かすのではなく、ひとつひとつ動きをチェックしながら動かすことがおすすめです。
実際に手首を動かしていく方法を紹介していきます。
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- 手首の尺屈
骨折した側の手を反対側の手で持ち、
手を押し込みながら小指側に手首を曲げます。
適当にクイッ!クイッ!と曲げるのではなく、じんわりと少しずつゆっくり曲げていってください。
その時の限界までいきましたらそこで30~60秒曲げたままで待ちます。 - 手首の撓屈
次は先ほどと同じ要領で手を押し込みながら
親指側に手首を曲げます。
こちらは先ほどよりももともと曲がらない方向なので無理にたくさんではなく突っ張りをほぐせる角度であればそれでかまいません。
同じく30~60秒じっくりほぐしていきます。 - 手首の掌屈
次は手首を手のひら側に曲げていきます。
基本的な方法は同じです。
この動きは日常生活であまり大きく曲げることがないためリハビリでもみなさん雑になりますが、拘縮をしっかりとっていくには絶対に欠かせない方向です。 - 手首の背屈
最後にこちらは手をつくときに必要な動作なので、きちんと曲がるようにリハビリしないといつまでも日常生活の不便は解消されません。
ただし、慌てずじっくり行っていかないといけません。 - 手首の回内・回外
次に手を持ってゆっくりまわしていきましょう!
これもきちんと反対側とおなじくらい回せるように動きを戻しておくのが大切です。
牽引をかけながら手首の可動域訓練をしていく
1~5までの動きを1回ずつじっくり行うのを何周もグルグル繰り返していきましょう。
最初は少ない回数から少しずつ行って、慣れてきましたらできれば1日の中でも朝・昼・晩などいろいろなシーンでコツコツ行っていけるようにしましょう!
これらで手首の比較的奥の組織が動かせましたので、皮膚や筋肉など表面の組織もほぐしていきます。
動きは1~5は同じですが、すべて手首を引っこ抜くように引っ張りながら曲げていくようにすることがポイントです。
やってみればこのちょっとした違いが大きな差を生んでいることを感じていただけるでしょう。
うまくこれらを組み合わせていくことが大切です。
握力をしっかり鍛えることが大切
次に、握力を鍛えていきます。
手の筋肉は持久力がある筋肉なので、とにかくグーパーを繰り返してください。
特にお風呂でしっかりグーパーをすると、可動域訓練と水の負荷で筋トレにもなりますのでお勧めです。
握力をきちんと戻さないと、日常生活でのちょっとした動きでも手首へ負担をかけていつまでも痛みがとれない原因になります。
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定期的に可動域を評価し改善具合を確認しよう
最初は、反対の手と動きを比べたら明らかに動かないことがわかります。
今回の1~5は最初は全然動かないのですが、リハビリを進めていけば必ず改善してきます。
特に5は早くに改善を見せてきますし、その後1,2もかなりいい感じで改善します。
そこで、大切なのが3,4の動きでこれがなかなか戻りきらないのですがそこを妥協してしまうことで後遺症が出やすくなります。
そうならないためにもきちんと関節の動きを左右で比較して、改善具合をきちんと確認しながら動きの悪い部分は完全とまでいかないにしてもできる限り反対の手と同じに近づくようにコツコツリハビリを続けることが大切です。
適当にリハビリする方は、適当なところで止めてしまいます。きちんとリハビリするためには、自分の現状や進行具合を的確に把握することが大切です。
そのためにも、各動きを反対の手ときちんと比較して評価することが大切なのです。
もしギプス固定中の方でお読みの方がいらっしゃったら
今回は、ギプスを外してからのリハビリをテーマに書いていますが、もしかするとギプス固定中の方もお読みいただいているかもしれません。
「ギプス固定中にもできることはしたい!」
という方におすすめなのは
- 指を鍛える
手首は固定して動かせませんが、指は動かせるようにしてくれているはずです。
つまみ運動や指のマッサージなどをコツコツしておくことは、ギプス除去からの回復に大きな影響をおよぼします。
- 反対側をしっかり使う
固定していない反対の手で握力を鍛えたり、手首のダンベルトレーニングをしたりすることは関係ないようで、ギプスをしている腕の筋力が落ちないようにする作用があるため重要です。
ことをしっかり行っておくことをお勧めします。
手首を手術してプレートを入れたという方のリハビリのポイントは?
手首の骨折の仕方などによっては、手術でプレートを入れたりすることがあります。
手術をした方も基本的なリハビリは今回紹介した内容でやっていただいて大丈夫ですが、組織を切っていることから皮膚をしっかり動かすリハビリをするとよりよい結果が得られます。
- 傷口の上を指で押さえて軽くもみほぐす、また傷口に皮膚のたるみを寄せていく
- 傷口に指をあてて、縦方向に皮膚を動かす
- 傷口に指をあてて、横方向に動かす
このような手順をおこなって固くなっている傷口の皮膚の動きを取り戻すことを第1のメニューに加えることでよりスムースにリハビリを進めることができます。
おわりに
病院で医師から普段の生活で動かしたらいいですよと言われた方は、確かにそれは間違いでありませんが医師の前提としては
- 年配の方が日常生活する程度ならそれでも十分改善が見込めるしいいんじゃないか?
- リハビリ指導する環境が整ってないし、自分がしてあげる時間もないから現実的な対応として
- 骨がくっつくところまでが医師の1番の役目でそこからは専門外だ
みたいなことから、口頭で簡単に済ませられてしまうこともあります。
もちろん、日常生活でもあまり動かないかなりご高齢の方ならそれもありかもしれませんが、
- 普段の生活でも痛んだり疼いたりしたくない
- 趣味やスポーツもやっているしきちんと手首の動きを取り戻したい
など、日常生活を後遺症なく過ごす、もしくはそれ以上の目標がある方であれば、ただ適当に動かしている以上のリハビリは必要になってきます。
絶対にしなきゃいけない!とまでは言いませんが、ご自身のありたい状況にあわせて必要を感じられるようであればこれらをコツコツするだけで十分リハビリとして成立します。
実際当サイトにもこれらのことを不安だというお問い合わせが結構ありましたのであらためて記事として紹介します。
お身体に関するお悩み解消にお役に立てる情報が提供できていますと幸いです。
「自分の身体について直接相談したい」
「実際に自分にあったエクササイズを指導してほしい」
と思われた方は、こちらで直接診せていただくこともできます。
